このたびはご来駕賜り、誠にありがとうございます。
 伊豆最古ともいわれ、悠久の伝統と格式を誇る修善寺温泉。その中心に位置する修禅寺は弘法大師空海が開基した寺として、また源氏興亡の哀史を見届けた寺として有名です。このような場所で開催させていただけますことを大変嬉しく思うとともに、身の引き締まる思いです。
 幾度となく推敲・揮毫を繰り返し、数ヶ月かけてようやく作品は完成します。一つの作品を何百枚と書き続けていくうちに、ある日突然思いがけないことが起こります。ほんのわずかですが、筆跡に今までと違う表情が出るのです。そのかすかな光を頼りに、そして積み上げながら、作品を徐々に「成長」させていきます。選び抜いた筆と墨に想いを託し、全ての知識と技術を総動員し、ただひたすら書く・・・私はそれ以外に作品を作る術を知りません。
 とはいえ、まだまだ拙く未熟な作品ばかりであることも事実です。今後一層の努力精進に努め、より「力強く、洗練された現代書」を作り出す覚悟ですので、是非ご指導・ご鞭撻また応援のほど、よろしくお願い申し上げます。末筆ながらご多幸をお祈りし、書中にてお礼とさせていただきます。        謹白

平成19年11月吉日  石田不空

作品目録

No. 題名 読み・意味・出典
1 翠馥 すいふく・緑ゆたかな香り の意 得心(筆庵) 四海昇平
(新誠堂)
2 光草月霞 春光・夏草・秋月・冬霞(題名は自作の造語)
春の景色・夏の草花・秋の夜空・冬の空気
日本の美しい四季と美しい言葉
昴(筆庵) 油煙墨二種
3 修真 しゅうしん・真理を学びとる の意 福寿(筆庵) 松鳳
(南松園)
4 遠鶴 えんかく・遠くまで飛んでゆく鶴 の意
限りない繁栄・長寿に譬えて言う
亥黄(筆庵) 油煙墨二種
5 五福祥来 ごふくしょうらい・五つの幸福がめでたく集まってくる。(五福…長寿・富裕・無病息災・道徳を楽しむ・天命を全うする) 幻奏
(筆庵)
油煙墨
6 安詳 あんしょう・心が静かに落ち着いた状態。思念と自覚を具えたさま。法華経 方便品 「安祥而起」より 九成宮用筆
(筆庵)
油煙墨
7 さよなら 柳葉
(久保田号)
松煙墨
8 さざなみ 昇雲
(筆庵)
青藍花
(呉竹)
9 鳳舞 ほうぶ・鳳凰が舞い遊ぶの意。 天下泰平に譬えて言う。 相生
(筆庵)
結松心
(呉竹)
10 草にすわる 八木重吉の詩 にしき
(久保田号)
松花
(呉竹)
11 牧水の歌 白鳥は悲しからずや 空の青 うみのあをにも 染まずただよふ 柳葉
(久保田号)
油煙墨
12 登高 とうこう・高みに登る 兼毫
(筆庵)
油煙墨
13 和其光同其塵 その光を和し、その塵に同ず
才知を隠して表に出さず、世俗の中にあって異和を起さぬこと。和光同塵の精神。
清明
(筆庵)
松煙墨
14 咸鳳祥麟 かんほうしょうりん
鳳凰・麒麟、共にめでたいことの前兆である。
玄武
(筆庵)
松煙墨
15 うさぎ まどみちおの詩「うさぎ」冒頭の一節 小筆 松煙墨
16 琴中趣 きんちゅうのおもむき・琴という楽器そのものの持っている味わいと楽しみ 幻奏
(筆庵)
養静
(呉竹)
17 ちょう 幻奏
(筆庵)
秋月
(南松園)
18 無境是真機 むきょうはこれしんき
逆境は、真のきっかけとなる。
霊機震天 油煙墨
19 青霞 せいか・志が高いこと 内地黒天尾
(筆庵)
四海昇平
(鈴鹿)
20 牧水のことば 歌集「ひとりうたへる」序文 双料写巻 信印呉竹
(呉竹)
21 牧水の歌 あめつちの こころあらはに あらはれて かがやけるかも 富士の高嶺は 面相筆
(筆庵)
登雲龍
(南松園)
22 ゆたか 幻奏
(筆庵)
油煙墨
23 偈(げ) 拾得の詩
本来万物皆空であるから、無一物だけに塵を払うこともない。人もしこの仏法の真諦を悟ることができれば端座して座禅を行い、無念無想の境に入ることもない。
幻奏
(筆庵)
秋月
(南松園)
24 うれい 幻奏
(筆庵)
秋月
(南松園)
25 山静松声遠
秋清泉気香
山静かに松声遠く 秋清く泉気香(かんば)し  
山はもの静かで松に吹く風の音は遠くして秋は清らかで泉気は香しく感ずる。
相生
(筆庵)
白澤
(古梅園)
26 はな 福寿
(筆庵)
四海昇平
(鈴鹿)
27 可憐 かれん(扇面天地反転使用) イタチ長鋒 青藍花
(呉竹)
28 するめ まどみちおの詩 イタチ長鋒 青藍花
(呉竹)
29 震天 しんてん・天地をゆるがす 抱雲月霞
霊機震天
油煙墨
30 尾上柴舟の歌 堪へがたき 心の憂 秋風に 揺らるる花を ひとり見るかな 羊毛長鋒 結松心
(呉竹)